SCWOG × SAO 始まりの時 のバックアップ(No.1)

始まりのとき


 今、世の中は最大のゲームブームである。


2022年にVRMMO初の「ソードアート・オンライン」が発売され、その勢いは増したともいえるだろう。ただ、当時は茅場晶彦がプレイヤーたちを
その空間に閉じ込めてしまい、約二年間という長期のデスゲームを強いられた者もいた。


 彼らはもちろん、彼らの家族や仲のいい者たちは、「こんなゲームがなければ……」と恨んでいた。だが世間は無情にも、彼らが眠っている間に
新しいソフトは開発され、そして販売。ゲーマーたちによってソフトは購入され、ゲームブームが衰えることはなかった。


 デスゲームを強いられていたプレイヤーたちもまた、全員ではないにしろ現実世界に戻ってもしばらくすると、VRMMOの世界が
忘れられず、ダイブするという始末。二年間心配をしていた家族や仲のいい友だちを押し切ってでも、その世界にはまる者が続出している
というのが今だ。


現在、「ソードアート・オンライン」「アルヴヘイム・オンライン」「ガンゲイル・オンライン」がすでに販売されてから
時が過ぎ、待望だったVRMMOのパソコン版が遂に発売された。
 これは画期的なもので、チャットをして仲間を集め、一緒にログインをして、その世界を冒険できるというもの。ニコ生を利用して
仲間を集める者もおり、ゲーム初心者には特に嬉しい製品だった。




 そしてここに、購入したばかりのパソコンを担いで走る一人の女子高校生がいる。彼女の名前は安心院ミカ(あじむ みか)。
公立高校の進学コースで日々勉強に追われているのだが、一日の勉強のノルマを達成すれば、その他の時間は自由にしてもいいという
母親の言葉通りに、ノルマを達成するとすぐにゲームに時間を費やした。


 昨日、テストの返却があり五教科のうち四教科が100点満点。さらに残りの一教科は97点という奇跡にも近い高得点を出したので、母親が
娘に新しいパソコンを購入してあげたというわけだ。
今、彼女が抱えているパソコンは、最新型のものでスペックが非常に高い。高校生のお小遣いでは決して買うことができない
高級パソコンでもある。


「今日は仲間をゲットして、絶対に一番になるぞ!!」
 ミカは抑えきれない気持ちを言葉にして、さらに走るスピードを上げた。




 これからミカがしようとしているゲームは、「アルヴヘイム・オンライン」のパソコン版。パソコン版ならきっと
VRMMOよりは安全と、ゲームの知識のない母親が認めてくれたものだった。


 先程パソコン版の説明を少ししたが、どうしてこれが発売に至ったのかというところにも触れておこう。VRMMOでは当然のように
自分の言葉で会話をして冒険をすることができた。これまでのゲームとしてはあり得ない要素。だが、そのあり得ないことを
可能にし、ゲーマーたちを魅了してしまった。
 パソコン版になったときも、その部分は外せないところだと制作側で喧々諤々とし、その結果オンラインチャットで自分の声を使い
ゲームをすることを可能にしたのが、このパソコン版のゲームなのである。
 そして、「アルヴヘイム・オンライン」通称ALOでは、ALO通話グループが形成され、オリジナルキャラクタの一人が
リーダーになり、SCWOG Wikiが開設される。


 ミカは実生活でも常に一番になりたいという欲求を抱えた女の子。ゲームの世界でもそれは同じで、自分がリーダーとして
人を集めようと心に決めていた。彼女にとっては、誰か他の人がリーダーのグループに入る……という考えが、そもそもないのかも
しれないが。


 ALOでのミカの名前は、現実世界と同じく「ミカ」。キャラクタは全て妖精になるのだが、ミカはサラマンダーという種族を選んでいる。
サラマンダーは初期設定から弱いながらも炎系の魔法が使える。もちろんスキルをアップさせれば高度なものも使えるが、まだまだ
初心者のミカのスキルは高くはない。
 ただ、引くことを知らない性格のため、ゲームの中でも撤退をすることもなく勢いだけで敵を蹴散らしてしまう瞬発力が、現実の
ミカからゲームのミカに引き継がれていた。




「ただいま~」
 ミカは玄関でそう言うと、母親が顔を出す前に二階の自分の部屋へと直行する。階段を駆け上がっているときに、母親の声が聞こえた
ような気がしたが、今はかまっている場合ではない……とミカは考え返事をしなかった。




 自分の部屋に着くと、鞄をベッドに放り投げて、買ってきたばかりのパソコンを箱から取り出し、セッティングをして電源を入れる。
 一昔前に比べると、パソコンの起動時間は驚異的に早くなったのだが、こんな風に楽しみがある時には、それでも長く感じてしまう。
「あぁ~楽しみすぎて、手元が震えてきちゃったよ。ふふふ~今回はあのスノークリスティがイベント主宰をするんだもん。これは
名前を売るチャーンスだよねっ!」
 そう言いながら、起動したパソコンでニコ生にアクセスし、SCWOG説明会を開催する。ミカはマイクをつかんで、息を吸い込んでから
話し始めた。
「ALOで遊んでいるみんな! 私はサラマンダーのミカ。今日開催される、あのスノークリスティ主催のイベントに参加しようと
思ってるんだ。私と一緒にパーティーを組んで冒険する人を大募集だよ! 一緒に楽しい冒険をしよう!!」
 ミカが言い終えると、緑のランプが二つ付き、誰かがミカに反応したことを示す。ミカはガッツポーズを取りながら、その二人に
発言権を与える。
「はじめまして。アルフのユカと申します。回復魔法を得意としているので、攻撃系のスキルは高くないのですが、私も
ご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?」
 白いワンピースに、黄金色でロングヘアの綺麗なキャラクタが目の前に現れる。声のトーンはとても優しい響きで、聞いている
だけでも癒されそうだった。
「もっちろん! 回復スキルも重要だからね。力の強化とか補助系のスキルもあるの?」
「はい、ございます。……といっても、私はまだ初心者なので、どれもそれほど強力なものは使えないのですが……」
「あはは。大丈夫。私も初心者だから。同じ同じっ! 安心して、私についてきてよ!」
「!! ありがとうございます!」
 ユカは男女問わず魅了してしまいそうな、微笑みを見せる。その表情に思わずドキリとしてしまいそうになり、その感情をごまかすため
もう一人のキャラクタに声をかける。
「で、君も私と一緒に冒険したいって感じ?」
 今まで黙っていたのは、可愛らしい童顔の男性キャラクタ。黒い装束を身にまとい、ちょっとだけ生意気そうな表情をしている。
「別にそうじゃないよ。スノークリスティが本当にイベントを立ち上げたのかなって思って……。あ、ボクはスプリンガンのユウ」
 ユウは少しムスッとした感じの声で話す。地の声がそうなのか、本当にムスッとしているのかは、わからない。
「あぁそれは、本当だよ。今日の十六時から開会式があるっていう情報があって、そこでイベントの説明をするのがスノークリスティ
みたいね」
「……その情報、本当なのか?」
「なぁに? ユウはスノークリスティのファンなの?」
「っ!? ち、違う!」
 ちょっとムキになったユウは、自分で肯定していることに気付いていないらしい。
先程から何度も出てきている「スノークリスティ」とは、ALO最強ユーザーとして知られる女性。ウンディーネ唯一のユニークスキル保持者
でもある。クールな彼女だが、男性ファンはかなり多い。
「あんなミーハーと一緒にするな。ボクは真剣に強くなりたくて……」
「へぇ~。強くなるのが目的なんだ。じゃあ、私と一緒だね! よーしじゃあ、今回はこの三人で冒険に出よう!
 きっと楽しい冒険になるよ!!」
「え、おい。ボクは別にパーティーを組むなんて一言も……」
「わー! とても楽しみですね。よろしくお願いいたします!」
「ボクの話を聞け~!!」
 ユウの声を無視してミカはパーティーのセットボタンを押した。これにより、ミカがログインボタンを押すと、二人は強制的に
ログインすることになる。
「それじゃあ二人とも準備はいい? 大暴れするわよ~!!!」
 こうして、ミカ、ユカ、ユウの三人はALOの世界へとログインしたのだった。


執筆:如月わだい
企画:スカイプ通話しながらオンラインゲームWiki
ラーミア, yayoi shirakawa ,柊正一
原作:ソードアート・オンライン


第二話「牧場ウォークラリー開会式」の連載予定は三月八日頃になります。お楽しみに!


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